
日本人に可能なDXについての考察
- 2021.08.03業務連絡
日本人に可能なDXについての考察【無理なく取り組めば実現できる】
そもそもDXは進んでいないのでしょうか?
DXしなければ企業は生き残れない、取り残されると急き立てられ、とにかくIT化を進めなければと焦っている経営者も少なくないかと思います。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、経済産業省は以下のような定義を挙げています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver1.0 https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf)
経済産業省も2025年の完了を目指して働きかけはしているとのことですが、実際には9割以上の企業がまったく取り組めていないという調査結果が独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から出ているのです。(2020年10月発表)
経済産業省の「DX中間レポート2 中間取りまとめ」を見ても、自己申告にもかかわらず約500社が「取り組んでいない」と答えています。
確かに、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークがここまで求められているにもかかわらず、まだ通勤電車の本数を減らすと乗り切れない人で溢れる現状が日本にはあります。
ただ、本当に日本企業のほとんどで、DXには一切着手されていないのでしょうか?
DXという言葉に縛られずに考えてみる
DXという理解しにくい言葉はひとまず置いておいて、企業が近年意識的に始めつつある業務スタイルの変化を考えてみましょう。
リモートワークは最たる例ですが、ほかにも切り売りではなくオンラインサブスクリプションへの移行、実店舗に並行したECサイトの展開、クラウドによる顧客データの企業内共有など、さまざまな変化が起こっています。
外食産業でもオンラインでオーダーし、顧客の元へと配達する仕組みなどがすでに浸透しつつあります。
これらはまさにデジタライゼーションであり、DXのベースとなる動きの一つと言えます。
日本語ではデジタル化と言ってしまいますが、デジタライゼーションは単なるデジタル技術の利用ではなく、新しいビジネスモデルの開拓です。
単に技術を使うのはデジタイゼーションであり、ややこしいですが同じではありません。
もちろん両方ともが相まって社会全体が変わっていくのがDXです。
音楽を聴くのにレコードを買うことからCDに代わり、データダウンロード購入に代わり、ストリーミングのサブスクリプションに代わっていくのがDXです。
いきなりDXと急き立てられても、レコード店が急にサブスクリプションのビジネスモデルを考えつくわけではありません。
闇雲に先を見るのではなく、周りを見れば見えてくる半歩先、1歩先の未来に目を凝らすことが、本当にDXを実現するための道筋ではないでしょうか。

日本に合うデジタルビジネスモデルを
アメリカでデジタライゼーションが非常に速かったのは、国土があまりに広いからです。
隣の州にも気軽に行ける距離ではなく、企業がひしめく大都市は移り住むにも相応の家賃が必要です。
時間も費用も多くかけるくらいなら、通勤ではなくリモートでビジネスを進めるほうがずっと企業にとって便利になります。
海外はもちろん国内での会議も何十年も前からビデオ会議が当たり前ですし、そうした土壌に合わせた通信技術もスピーディーに発達しました。
家から店まで長距離を運転していくより、オンラインショッピングのほうがユーザーにとって利便性が高いのは言うまでもありません。そうした消費者のニーズに合わせて大企業がサービスを展開すれば当然成功します。
損得勘定で計算したときに、機材を投入するよりみんなで一ヶ所に集まったほうが安上がりだという日本においては、こうした考えが浸透しにくいのも当然でしょう。
ただし、日本もスマートフォンの普及により消費行動が大きく変化しつつあり、世代交代が進む中であらゆる行動がオンライン化する現実が見えてきました。
今やスマートフォンを中心とした消費行動にマッチしないビジネスは、先細りが懸念されます。
企業は単に今までの作業をデジタル化、IT化するレベルではなく、「スマートフォンの中に顧客がいる」と考えて日本に合うビジネスモデルを考える必要があると言えます。
令和2年でのスマートフォンの世帯別保有率は、83.4%との数字が総務省から発表されています。パソコンは69.1%です。
スマートフォンなしではビジネスを推進することができない現代社会になっています。
欲しいのは人材と機材
DXという言葉に縛られる必要はありませんが、これからの社会を考えたときに欠かせないものが2つあります。
それがITに関わる人材と機材です。
経済産業省がここまでDX化の遅れを指摘するのは、「2025年の崖」を問題視しているためです。
2025年から年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性を指す言葉ですが、この額は現在の約3倍にあたる数字ですので確かに楽観視はできません。
なぜ起こるかの理由に経済産業省が挙げているのも、ITに関係する人材の不足と基幹システムの老朽化=機材不足です。
たった今からスタートしても、将来の世界のデジタル市場競争で生き残れる可能性は決して高くありません。
ですが、少しでも生存率を高めるために、機材、人材、技術など全てにおいて、投資を行う必要があります。
まとめ
社会が混乱しビジネスの現場が焦るのも当然ですが、急にDXと言われて一足飛びに大変身できる企業ばかりとは限らないでしょう。
実現するためには、たとえば企業内にIT人材を確保もしくは育成する、使っている機材やシステムを見直してみるといった部分から始めることも最初の一歩になり得ます。
大企業は別として、日本で日本企業がデジタライゼーションを考えるなら、まずは誰にとっても当たり前の存在になりつつあるスマートフォンを眺め、ビジネスでなにができるか考えてみるのが一番ではないでしょうか。
自社はDXとは無縁だ、IT分野にはまったく関わりがないと考えることこそ、DX実現をもっとも遠ざけることだと言えます。